日本家族療法学会
第41回大会のご案内

お知らせ

【御礼】日本家族療法学会第41回金沢大会・Cross-Cultural Conference of Family Therapy from Asia and Beyond(FTAB)共同開催は、盛会のうちに無事終了いたしました。ご参加いただきました皆様にこころより御礼を申し上げます。
今後も日本家族療法学会をどうぞよろしくお願いいたします。



第41回大会の開催にあたって

 第41回日本家族療法学会学術大会開催に際し、大会長を務めます小笠原知子より、ご挨拶を申し上げます。
 新しい年の始まりである2024年元日に発生した石川県能登半島地域を震源とする地震とその大きな被害に対し、みなさまからいただいた数々のお見舞いや励ましのお言葉に対し、心より御礼申し上げます。
 能登半島地域の被害は甚大であり、被災された方々や地域への支援は始まったばかりでありますが、金沢市は幸いにも被災の影響は小さく、現在、県内被災地への支援の中核を担う地となっております。このような時節、多様な専門性において家族と地域社会への支援を志向する同志であるみなさま方をこの金沢にお招きするにあたり、第41回日本家族療法学術大会のもつ意義と役割をあらためてかみしめております。
 本大会におきましては、「Moving Forward Together~これからの家族支援、これからの家族療法家」という大会目標のもと、現代に生きる私たちの「専門性」と「人間性」を家族という文脈で探索し、「関係性」が持つレジリエンスに根差した「これから」について共に語り、学び合い、あらたな発見や感動を共有する学術集会となることを願っております。
 このような願いのもと、第41回大会では、アジアを中心とした地域の家族療法家たちとの共同開催大会が実現し、国や文化社会、言語の違いを包含し、共にfamily therapyの未来を担う家族療法家の養成について考える大会企画を準備いたしました。日本と韓国、台湾が中心となり様々な家族について事例検討を重ねてきたこのユニークな国際ケースカンファレンスは、今年度は日本が主催国となり、Cross-Cultural Conference of Family Therapy from Asian and Beyond(FTAB)という新たな大会名で、アジアを超えた世界の地域から家族志向の臨床家が集う場を提供いたします。英語を共通言語としたケースカンファレンスは大会同時開催となっておりますので、日本の会員のみなさまもこの機会にぜひ、世界の家族について語る会にご参加ください。
 また、世界の家族療法の中でも、特にfamily therapyの発祥地でもある米国から、本大会招聘講演者としてミネソタ大学教授William J. Doherty(ウィリアム J. ドアティ)博士を初めて日本にお招きし、基調講演をいただけることはこの上ない光栄と存じます。米国におけるfamily therapyの黎明期から半世紀にわたり、困難を抱える家族やカップルを医療、教育、地域政策を通して支援されてきたDoherty博士が持つ家族療法家としてのアイデンティティー、その倫理的、社会的コミットメントについて知ることは、「これから」の私たちにとって大きな示唆を与えてくれる機会となるでしょう。
 今大会が提示する国際的視点の根幹には、人間同士、家族内の関係構築において多様性に対する、また「異なるもの」に対する互いの感受性は欠くことのできない心理社会的要素であるという理解があります。大会特別講演者としてお招きする山本志都先生(東海大学)は「異文化感受性発達モデルを活用した対人援助の可能性」というタイトルのもと、違いに対する人々の接し方を6つの発達段階で説明する枠組みを紹介します。個々の局面での反応を次の段階へと引き上げるサポートが、新しい環境や変化に戸惑う人々のストレスを軽減し、持続的な成長をもたらす可能性についてご講演くださいます。
 大会企画においては、上記のような国際的視点と併せて、現代の日本社会における家族と地域社会への支援を捉える4つの企画を立ち上げております。まず、世代や職種の多様なシンポジストが家族療法の魅力を語り、次世代の家族支援や家族療法家の姿を提言する大会企画「日本における家族療法の魅力と臨床家の養成」、現代に生きる夫婦・カップルが直面する離婚、関係不和や子育て、不妊の悩みなどの危機的状況を取り上げる大会企画「岐路に立つ夫婦・カップルへの支援」、医療システムの中で家族志向はどのように効果性を発揮できるのかを検討する大会企画「医療における家族療法との協働」、そして、大会企画『認知症患者家族への支援:専門家の「私」と当事者である「私」』においては、研究者、脳科学者、精神科医のシンポジストが専門家としてまた認知症患者家族の当事者として家族の介護について議論いたします。
 3日目のワークショップにおいては、広く家族療法・家族支援を知っていただき、それぞれの職種や現場で役立てていただくために、家族療法の入門編から実践編を網羅したワークショップや、学校教育や摂食障害治療の場での家族支援、トラウマを抱えた家族のケアやリフレクティングプロセスについて学ぶワークショップまで、多様な臨床アプローチとスキルを習得できる機会を提供いたします。
 最後に、この度の震災を受け、日本家族療法学会災害支援委員会が主体となって、震災支援特別企画を9月29日(日)に金沢文化ホールにて公開市民講座および支援者を対象としたワークショップを開催することに決定しました。どちらも無料で参加できるものとなっております。詳細は追って発表いたしますが、多くの方々の参加をお待ち申し上げております。

大会長 小笠原 知子(金沢大学国際基幹教育院)

招聘講演

William J. Doherty, Ph.D. (University of Minnesota)

William J. Doherty博士は、米国ミネソタ大学(University of Minnesota)家族社会科学部教授であり、40年以上にわたって米国における夫婦家族療法(Marriage and Family Therapy)の教育、臨床、研究分野の発展に貢献。医療的家族療法(Medical Family Therapy)やCouple Therapy全般、特に離婚の危機にあるカップルのための「識別カウンセリング(Discernment Counseling)」など革新的な臨床モデルで知られる一方、様々な地域社会の課題に関わり、プロジェクトを立ち上げてきた。現在、専門職と当事者家族の協働関係構築からさらに進んだ市民型リーダーシップの養成を目的とする市民プロフェッショナルセンター(Citizen Professional Center)の所長を務め、エビデンスに基づく臨床モデルを組み入れた調査研究であるミネソタ州カップル支援プロジェクト(the Minnesota Couples on the Brink Project)を統括している。2016年には、米国の社会的分断に対し、コミュニティの絆を回復するためのBraver Angelsを共同設立。以前よりアメリカ社会の個人主義的傾向に警鐘を鳴らし、家族療法家の倫理的、社会的コミットメントの重要性について論じた多数の著作を持つ。American Family Therapy Associationより生涯功績賞(the Lifetime Achievement Award)を受賞。

特別講演 

山本志都 「異文化感受性発達モデルを活用した対人援助の可能性」東海大学

東海大学文学部英語文化コミュニケーション学科教授
ポートランド州立大学大学院で異文化コミュニケーションと組織コミュニケーションを専門に学び、知覚構成主義に基づく革新的な異文化コミュニケーション教育法を開発し、その成果を『異文化コミュニケーション・トレーニング:「異」と共に成長する』(2022年、三修社)として発表。現在Intercultural Development Research Instituteのディレクター(エグゼクティブ・ディレクターはミルトン・ベネット博士)を務め、異文化や多様性の経験を成長につなげることへの貢献に注力している。専門分野は異文化コミュニケーション学、異文化感受性研究、異文化トレーニング。

震災支援特別企画

公開市民講座 (無料)
「被災地における家族の苦悩とこれから」
被災者・被災地支援者を対象としたワークショップ(無料)
「被災地における高齢者やこどもたち」